「ムーラン・ルージュ」とダイヤモンドネックレス |
すこしあらすじを紹介しましょう。
舞台は1900年のパリ。
作家を目指しモンマルトルにやってきた青年クリスチャン(ユアン・マクレガー)は、街の安宿で自由と愛についての物語を書こうと意気込んでいたが、物語に出来る恋愛経験が自分にない事に気付き途方に暮れていました。
<パリのムーラン・ルージュ>
ある日、キャバレー「ムーラン・ルージュ」専属作家のオードリーや、新進の画家ロートレックたちと知り合った。ロートレックたちはムーラン・ルージュの新しい舞台を考えていたが、音楽が決まらず焦っていたところ、クリスチャンは、気軽な気持ちでショーに似合った曲を披露してみせたが、ロートレックはそれを大層気に入ってクリスチャンをライターとして誘い、幸運にも、クリスチャンは代理としてショーの台本を担当することになります。
<ムーラン・ルージュのラ・グーリュ/1891年/ロートレック作>
やがて彼はムーラン・ルージュの高級娼婦サティーン(ニコール・キッドマン)に恋をしてしまいます。女優を目指していたサティーンは、クリスチャンが自分を女優にしてくれる資産家の公爵と勘違いし、ベッドに誘い込もうとするが、自作の詩を口ずさむ純粋な彼に心を動かされ、クリスチャンが貧乏作家だと知りつつも、彼女も彼に惹かれていき、二人は恋人になります。
作家と女優の関係を装いながら愛し合う二人でしたが、ムーラン・ルージュのオーナーであるジドラーにキスの現場を目撃され、サティーンは公爵のところへ行くように命じられ、二人の関係を知った公爵はクリスチャンに激怒します。
やがて結核で自分の死期が近いことを知ったサティーンは、クリスチャンと別れることを決意します。そして間もなくサティーンは亡くなってしまうのです。
見所は、バズ・ラーマン監督の遊び心溢れたエンターテインメント性にあります。
貧乏作家と高級娼婦の悲しい恋の物語をベースに、プロモーションビデオのようなミュージカル仕立ての映画。
1900年のパリを舞台にするミュージカルとは思えない選曲ですが、マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」、エルトン・ジョンの「ユア・ソング」、ジョー・コッカーとジェニファー・ウォーンズの「愛と青春の旅立ち」など、馴染みの名曲を映画の中に取り入れた曲のアレンジは秀逸です。
さて、私がとても気に入ったのは主役のサティーンと共に、ストーリーの中で重要な役割を果たす、ジュエリーのゴージャスさと素晴らしさでした。
これほどジュエリーが効果的に使われる映画はあまり記憶にありません。
公爵が、サティーンの気を引こうと誂えた、サティーンの首にぴったりとフィットする豪華なダイヤモンドのネックレス。
映画ではイミテーションを使うか、本物であっても、既存の製品をレンタルするのが、普通ですが、今作では、重要な役割を果たすこのダイヤモンドネックレスに関しては、監督や衣装スタッフのこだわりで、本物のダイヤモンドを使用して、一から作ったそうです。
デザイン・制作は、オーストラリア・シドニー在住の宝飾デザイナー、ステファノ・カンチュリ氏。
デザインは、1900年のパリが舞台ということで、19世紀の終わりにパリを中心に流行した、花と葉が組み合わされた、ガーランド様式を再現。
<ダイヤモンドネックレス「サティーン」を身に纏うニコール・キッドマン>
使用するダイヤモンドは、ステファノ氏自らがセレクトし、デザインと製作併せて約4ヵ月。
トータルキャラットは、メインの5キャラットのエメラルドカットを始め、合計134キャラット、1,308個のダイヤモンドを使用。
しかもニコール・キッドマンの首の長さや形にぴったり合うように計算されているため、彼女の際立った美しさを更に引き立てているのです。
その名も、ニコール・キッドマン演じる役名にちなみ、「サティーン」と名付けられました。
映画の撮影後、クリスティーズのオークションにかけられる予定で、落札価格は70万ドル~100万ドル(約8400万円~1億2000万円)と予想されていましたが、直前になって出品を取り止めたそうです。
今は、誰の手元にあるのでしょうね。
Ken