ホテルニューグランド |
キーワードを幾つかに絞りました。
・長い移動時間による疲労とストレスの排除。
・海、花火、映画に食事、全部愉しめるエリア。
・ゆったりとしたくつろぎと癒し。
そこで選んだ先は横浜。そして宿泊先はホテルニューグランド。
二泊三日という限られた時間ですが、全てを満たす場所としてそう決めたのです。
迎えた二日目の早朝5時過ぎ。
8階の部屋のベッドで寝ている我々を起こす異変。
いつもとは違う大きな揺れ。
東海地方を襲った震度6弱の大地震でした。
幸い我々は無事でしたが、このホテルで地震に遭うなんて「奇遇だな!」そんなことを考えていました。
なぜ私がそう思ったかというとそれには理由があるのです。
ここで少しホテルの歴史について触れてみたいと思います。
時は江戸。
1853年(嘉永6年)に、アメリカのペリー総督が浦賀に来航し、開港を要求。
かの有名な黒船の来航。
当時、海外との交通手段は船のみ、横浜港は世界への玄関として発展。
貿易や技術指導のために訪れる多くの外国人のため、外国居留地に次々とホテルがオープン。
その中の一つが「グランドホテル」。
東京の帝国ホテル同様、外国人に一流のサービスを提供出来る数少ないホテルだったと推測されます。
海側から見えるホテルは横浜の町並みに溶け込んで、美しいスカイラインを見せていたでしょう。
ところが1923年(大正12年)に起きた関東大震災は街を一瞬にして瓦礫の山にしてしまいました。
ホテル経営者は無残なその光景を見て、ホテルの運営を断念せざるを得ませんでした。
これを受けた神奈川県や横浜市は、国際都市横浜の再生のシンボルとして、新ホテルの建設に着手。
ホテル名は震災前に横浜を代表した「グランドホテル」の名を蘇らせようという思いから「ホテルニューグランド」に決まったそうです。
つまり横浜市民の熱意があってこそ完成したホテルなのですね。
ここに宿泊した有名人は数多くいると言われています。
外国の方ですと、
マッカーサー元帥
チャーリー・チャップリン
ベーブ・ルース
日本人ですと、
大佛次郎
池波正太郎
石原裕次郎
松田優作
その他にもたくさん…
こんなエピソードがあります。
1945年(昭和20年)8月30日、厚木飛行場に降り立ったマッカーサー元帥。
彼は「どこへ」と聞かれると、「ホテルニューグランドへ」と答えたそうです。
以前に2度、宿泊の経験があり、よほど心に残るホテルだったのでしょう。
現在、同ホテルは創業80年を越えるまでに至り、1991年には時代のニーズに応えるためニューグランドタワーをオープンさせ、2004年には全面リニューアルを果たしました。
これが簡単なホテルの歴史です。
つまり、地震(関東大震災)がホテルニューグランドの歴史をスタートさせた、と言っても過言ではないでしょう。
お陰様でスタッフのホスピタリティ溢れる応対、心地よい空間で、我々は快適なホテルでの時を過ごすことが出来ました。
また、ホテルニューグランドにいる時間に、こんなことを考えていました。
なぜこんなに私も含めてこのホテルは人々を魅力して止まないのだろうか?
先に書いたように、長い歴史と横浜の方々の思い入れがあることもそうでしょう。
建造物としても評価が高く、素晴らしいこともそうでしょう。
そして長年培われたレベルの高いサービスもそうかも知れません。
でも、今回初めて宿泊してみて、私なりに答えが見えたような気がします。
それは、旧館のエッセンスと新館の新しい要素が絶妙に融合しているところなのではないか、ということです。
もっと言えば、やはりホテルニューグランドの真髄は旧館にあり、そしてそれが新館の「新しさ」「エレガントさ」と絶妙に引き立てあっているからではないでしょうか?
私はこの旧館がいまだに残されている意味は非常に大きいと思えるのです。
ホテルニューグランドのように100年近い、長い歴史を持つ「ブランド」や「企業」等は常に、「伝統」と「革新」の折り合いという宿命にぶつかります。
伝統と革新、これが絶妙のバランスで融合していくことが永続的な発展には不可欠なのだと思います。
そういう意味でホテルニューグランドはこの融合に成功しているのではないかと思うのです。
世界にはこの融合(ブランド・リニューアル)を果敢に試みて成功している企業やブランドがあります。
ルイ・ヴィトン
カルティエ
エルメス
バーバリー
マキシム・ド・パリ
その他諸々
皆さんの方がよくご存知ですね。
では、下記に挙げるものの共通点は何でしょうか?
ガス灯、鉄道、ホテル、レストラン、ジャズ、テニス、アイスクリン、ビール、牛鍋…
そうなんです。これらは、全て横浜発祥のもの。
ドリア、プリンアラモード、スパゲッティ・ナポリタン…
これらは実はこのホテルニューグランドから生まれたものだったのです。
常に世に新しいものを生み出してきた横浜のDNA、そしてその地で同様に名作を生み出して、宿泊客を満足させてきたホテルニューグランド。
今後も色々な新しい試みに果敢にチャレンジしていって欲しいですね。
束の間の時間でしたが、横浜という街が、そしてこのホテルが私の心を潤してくれた夏のひとときでした。
Ken