エルメス レザー・フォーエバー展を観て |
ここはかつて、吉岡徳仁氏が会場演出の監修を行った「カルティエ展 Story of …」が開催された場所。
エルメスが主催する特別展だけに期待していきました。
素材を重要視するエルメスならではの厳選した皮革
皮革職人は最初から最後まで一人が一つの製品を手がけます。
皮革で作られたサイ
時を重ねた風格
効果的な光の演出
時代とともに進化するバッグの形
馬具商としてスタートしたエルメスの真骨頂「鞍」
空間を使った美しい演出
ケリーバッグの中のケリーバッグ
次の部屋へといざなう光の演出
エルメスのある暮らし
盆栽とエルメス
エルメスにとってレザーとは最初の素材であり、170年以上の長きにわたって向き合ってきた素材。
素材の選定、裁断、縫製、仕上げまで伝承されてきた職人の技があり、品質へのこだわり、見えない部分にも決して手を抜かない完璧主義、歴史へのオマージュがクリエーションの源になっているのです。
そのことは、特別エキシビションを通じて納得がいきました。
こうしたモノ作りの姿勢は、従来、ラグジュアリーブランドは知る人ぞ知る「秘密」として公にはしてきませんでした。
こっそり自分たちの顧客にその「秘密」を知らせることで、彼らの自尊心をくすぐることで、エクスクルーシブであることに価値を見出してきたのです。
ところが、今回、この特別エキシビションでは、「素材」、「職人技」、「クリエーションの変遷」などその真髄をあますところなく公開しています。
しかも、入館無料。
その上、撮影が許可されていますから、個人的な楽しみとして画像をストックすることも出来ますし、友人にメールなどで知らせることも出来ます。そして中には、私のようにブログやSNSを使って拡散することも出来、その「秘密」は、その瞬間、「公然の情報」と化すのです。
私に一つの視点の変化を与えたのは、ダイアモンド ハーバード ビジネス レビューの記事
「ラグジュアリーブランドは、もう隠さない」(2013/11/06)でした。
「ラグジュアリーブランドに、いま世界的な変化が起こっている。これまでは、エクスクルーシブ(選ばれた人向け)であることに価値を見出していたが、自分たちのブランドのコア部分をオープンにし、消費者とのコミュニケーションのあり方を変えつつある。」
と書かれていました。
そしてその事例として、これまで非公開を貫いてきたメルセデスベンツのAMGが挙げられています。
従来、「熟練の職人が自分の手でエンジンを組み上げる」ことをブランドのシンボルにしており、エンジンプレートに担当した職人の名前が刻まれています。自動車をまるで伝統工芸品のように扱うことで、AMGをラグジュアリーブランドたらしめてきたのです。
2012年6月頃から同社はYouTubeに「AMG Virtual Tour」という動画をアップし、トップシークレットだった生産過程をネット上で公開しています。
YouTubeの「AMG Virtual Tour」で、エンジンが実際にひとりの職人によって組み立てられる様子を公開
エンジンがひとりの職人の手によってくみ上げられ、最後にその証拠としてエンジンプレートがはめ込まれる一連の映像は、強烈なインパクトを与えました。
「本当に手づくりだった!」とモーターファンを興奮させたのです。
こうした知る人ぞ知る「秘密」のオープン化は、「エクスクルーシブ(選ばれた人向け)」というラグジュアリーブランド本来の定義からいえば、受け入れ難いものであったはずですが、それにも関わらず、どうしてオープン化は止まらないのか。」と投げかけています。
ネットの進化とソーシャルメディアの爆発的な普及によって、商品や人物の中身は、どんなに取り繕っても、可視化されてしまう世の中になっているのです。
そうなると、今は「好むと好まざるとに関わらず、人々の人格や商品の魅力はネットの世界で判断されるようになってしまいました。
どんなに着飾っても、第一印象がネットの検索結果に左右されてしまう。
検索結果が思わしくなければ信用されない世の中になりつつあるのです。
上辺だけの華やかさではなく、より本質的な“中身”で評価される社会の到来が来たと言えるでしょう。
今や、ラグジュアリーブランドも、知る人ぞ知る「秘密」を、もったいぶるのではなく、誰にでもその凄さを公にすることが求められるのではないか、そうせざるを得ないのではないかと思うのです。
先日、銀座の一等地で開催中のクリスチャン・ディオールのエキシビション 「エスプリ ディオール - ディオールの世界」展を観てきました。
こちらも入場無料です。
4フロアで構成される会場は、ドレス、フレグランス、アクセサリー、資料や写真を通して、クリスチャン・ディオールの時代から後継者ラフ・シモンズの才能によって支えられる現在までの軌跡を紹介していました。
幼いころから日本の文化に親しんでいたクリスチャン・ディオール。
彼の想像の世界、同時代の芸術家たちとの交わり、比類のないコレクションを重ねながら創りだしたスタイル、舞踏会へのこだわりや女性に幸せをもたらすことにかけての驚くべき感性など、過去から今日にいたるクリエーションをたどりながら、私たちに語りかけてくれます。
もちろん、ディオールの特別展も写真撮影は自由。
その本質的な価値は、SNSなどのメディアを通じて、一瞬にして拡散して広まっていくのです。
今後、ラグジュアリーブランドは、
-ますます、本質的な価値が求められること
-ブランドたらしめている独自の価値をマスに向けて広めていく努力を怠らないこと
-広めていく手段・手法にはより工夫が要ること
そんなことを、2つの代表的なラグジュアリーブランドの特別エキシビションを観て感じたのでした。
Ken
こちらが関連サイトです↓
宝石、ジュエリー世界史(世界歴史)
芸術家、アーティスト(芸術)
PRECIOUS TIMEにいらして頂き、ありがとうございました。
下のボタンを押して頂ければ、大変嬉しく思います。
にほんブログ村にほんブログ村