ナポレオンの戴冠式とティアラ Part1 |
ジュエリーはお好きですか?
ジュエリーというと、どのような物を頭に浮かべますか?
私は、長らくジュエリーに関わってきました。
ジュエリーが持つ魅力は様々ですね。
美を彩る物として、高価な価値ある物として、人々の憧れの物として・・・
しかし、ここでは、ちょっと違った切り口でジュエリーの魅力をお伝えしたいと思っています。
例えば、映画の中のジュエリー、絵画の中のジュエリー、ジュエリーが歴史的に果たしてきた役割など・・・
ゆっくり美味しいコーヒーでも飲みながら、この書斎で私の話にお付き合いいただけませんか?
さあ、今日は何の話から始めましょうか?
Ken
皆さんは、「ティアラ」というとどのようなものを思い浮かべますか?
宮中の公式晩餐会などの様子を思い浮かべてみて下さい。皇族の妃殿下の皆様が頭部に着けている飾り、あれこそがまさにティアラです。
現在は、目にすること自体、極めて少なくなりましたが、今回は、このティアラというジュエリーについて書いてみたいと思います。
<絵画に描かれたナポレオンの戴冠式>
私にはティアラにまつわる、忘れられない1枚の絵があります。ご紹介しましょう。
『皇帝ナポレオン1世と皇后ジョセフィーヌの戴冠式』(1806‐1807年
それは、1993年に訪れたパリのルーブル美術館で初めて観た、ジャック=ルイ・ダビッド(1748‐1825年)の名作で、1804年12月2日に、パリのノートルダム寺院で行われたナポレオンの戴冠式の様子を描いたものです。
この作品は、現在、ルーブル美術館のドュノン翼2階「ダリュの間」にあります。
フランス新古典主義の大型絵画が並ぶこの部屋のほぼ中央に掛けられた縦6.21メートル、横9.79メートルにもなる大作で、パオロ・ヴェロネーゼの『カナの婚礼』に次いでルーブルでは、2番目の大きさを誇っています。
初めて、この絵画を前にした時の、あの圧倒される感覚は、今でも私の記憶の中で強烈な印象として残っています。
しかも、その後訪れたヴェルサイユ宮殿に、この絵とほぼ同様の絵があることを知ってまた驚いたのです。ナポレオンが最も愛した妹の衣装だけが白からピンクに変えられた以外はほぼ一緒だったのですから。
この絵には、約160名もの“キャスト”が登場しますが、描かれている女性全てが、豪華なティアラをつけていることに驚き、このティアラが醸し出す不思議な魅力について大変興味を持ったのです。
さて、宮廷文化の中で行われるこの象徴的で壮麗な「戴冠式」とはいったいどのようなものなのでしょうか?
戴冠式とは、君主制の国で、国王や皇帝が即位ののち、公式に王冠を受け、王位や帝位への就任を宣明する儀式です。
特にキリスト教国では、大司教などの高僧から、国王や皇帝となる者に聖香油が塗られることで、聖別され、宗教的権威から神権を授与されるのです。
フランスでは、この儀式に続いて、フランス正統の王であることを示すために、歴史的にも偉大なシャルルマーニュ大帝(742-814/在位:768-814)の冠を、時の宗教的権威より戴くのが通例で、代々ランス大聖堂において行われてきました。
<ダビッドの制作意図>
ところが、この絵には通常の戴冠式とは全く違う様子が描かれているのです。
つまり、中央にひざまずいて戴冠を待つのは、ナポレオン本人ではなく、皇后ジョセフィーヌであり、彼女に戴冠しようとしているのが、なんとナポレオン本人なのです。
しかも当初、作者ダビッドの構想では、ナポレオンの後ろで椅子に座っているローマ法王ピウス7世から冠を授かるのではなく、誇らしげにナポレオン自らが、冠をかむるところを描くつもりだったのです。
ところが、そのシーンの醸し出す傲慢さは打ち消しがたいとして、最終的には、構図としても面白い、ジョセフィーヌの頭上に冠をかざすようになったのです。
この戴冠式を描いたダビッドは、この式典の半月後の1804年12月18日に「ナポレオン皇帝の首席画家」に任命されました。
ダビッドと言えば、新古典主義絵画を代表する画家であり、ナポレオンはこの当代きっての画家に皇帝即位の儀式を描かせ、有効なプロパガンダとして、自らの栄光を永遠に画布にとどめようとしたのです。
[ナポレオンの戴冠式とティアラ Part2 ]に続きます。
Ken
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宝石、ジュエリー
世界史(世界歴史)
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